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Semi Final:積み重ねた歴史が芽吹くとき

2019/04/12, 17:00 - BY RIOT GAMES

Semi Final:積み重ねた歴史が芽吹くとき

Unsold Stuff Gaming(以下USG)は「売れ残り」を意味する諧謔(かいぎゃく)的な名前を看板に、2016年1月よりLJLに参戦したチームです。当初はほかのチームに無い奇抜な戦法で注目されたものの、戦績は伸び悩み、中堅チームの地位に落ち着いていました。

変化が訪れたのは2018年、現在もUSGのJungleを務めるTussle選手が加入してからでしょう。MidにGariaru選手、ADCにはGango選手を置き、Botレーンを中心に試合を動かしていくプレースタイルでシーズンを勝ち抜いていきました。

その結果、昨年のSpring SplitではLJL参戦以来初めてのプレーオフに進出し、Summer SplitではFinalにまで手を伸ばしました。3年かけてゆっくりと経験を重ね、着実に歩みを進めてきたのです。

しかしながら今シーズンはMidとADCの選手に変更があり、チームとして精彩を欠くシーンが目立ちました。

好調のapaMEN選手とハイパーキャリーのDasher選手を擁し、試合序盤で有利を築くことができながらも、素早く試合を終わらせることができない。中盤以降で差を縮められ、隙を突かれて逆転されてしまう。

前シーズン最下位という順位から一気に頭角を現したCrest Gaming Act(以下CGA)の華々しい活躍とは、対照的な状況でした。

レギュラーシーズン後半に至って試合時間こそ短くなったものの、Semi FinalではCGAと互角の戦いを繰り広げるだろうという予想が大半を占め、USGがいかにCGAを土俵際に寄せきるかが注目でした。

ところがUSGは、私たちのそんな考えをはるかに超えていきます。序盤中盤で隙なくCGAを抑え込み、試合を終盤までもつれ込ませることなくスマートに三連勝を決めたのです。

彼らがどのように変化したのか、Semi Finalを振り返りながら見ていきましょう。

なお以下に進む前に、先日更新された「USGの日本人3名に聞く、セミファイナルの話とファイナルへ向けて」を見ていただくと、よりUSGの変化がわかりやすいかと思います。

 

Game1:絡めとる罠、Enty

この試合で決め手となったのは、なんといってもEnty選手用いるモルガナのQスキル「ダークバインド」の精度でしょう。当たれば最長3秒のスネアは、試合の流れを大きく変える力があります。

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最初のバロンナッシャーをUSGが獲得するきっかけとなったのは、Enty選手が放った「ダークバインド」でした。

USGが先に視界のコントロールを行っていたため、CGAは危険を冒してその視界を消しに行かなくてはなりませんでした。Dasher選手とTussle選手が離れた瞬間を見計らって、hachamecha選手とGrendel選手がワードを破壊しに向かいます。

しかしEnty選手はCGAに見えない位置からhachamecha選手を狙い、見事にスキルを命中させました。

それにすぐさま反応したのがKeymaker選手。Enty選手に「ブラックシールド(CC、Cloud Control=集団に対する行動阻害を無効化するマジックシールド)」をもらい、強気に前に飛び出してhachamecha選手の体力を削ります。

マップを見ているとわかりますが、Keymaker選手はEnty選手のダークバインドが当たるか当たらないかのタイミングで、すでにそこへ動き始めています。これまでは中盤以降でBotコンビから試合が動くシーンはあまり見られなかったことを考えると、ここにも変化があるようです。

駆けつけてきたTussle選手も参加してhachamecha選手とそれを守ろうとしたGrendel選手を倒し、スマイト(モンスターに確定ダメージを与えるサモナースペル)を持つJungleとSupportがいないCGAが戦闘できる状態でないことを確信したUSGは、バロンを獲得。

ただでさえ劣勢の状況でバロンバフを持たれたCGAはなんとか逆転の一手を狙うものの、それを許すUSGではありません。

最後もモルガナの「ブラックシールド」が輝き、シールドがついてCC無効状態のDasher選手が強引にネクサスまでの道を切り開いて、一戦目は28分でUSGの勝利となりました。

 

Game2:勇躍するapaMEN

Enty選手と並んでUSGを初期から支えてきたのが、このapaMEN選手です。あらゆるところで取り沙汰されていますが今年は非常にパフォーマンスが高く、シーズン後半ではフィオラを見せ始めるなど変化が注目されていました。

CGAもそれを警戒しGame1ではフィオラへのバンを見せていましたが、Game1と2で彼がピックしたのはヨリックでした。レベル6になるとアルティメットで「霧の乙女(ヨリックの召喚する亡霊)」を召喚できるようになり、高いプッシュ力と装備が整ってからの1v1性能の高さが売りのチャンピオンです。

レーンマッチアップはヨリックVSケネン。序盤こそ遠隔攻撃ができるチャンピオンのケネンが有利なもののプッシュ力に欠けるため、差を作られなければ中盤以降はヨリックが押し込めるようになる組み合わせです。

apaMEN選手はこの寡黙な僧侶と同じように黙々と仕事をこなし、ファームを続けました。そしてついに、その瞬間がやってきます。

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Game1でもそうでしたがapaMEN選手はレベル6までセーフティにファームを行い、アルティメットを覚えて「霧の乙女」を召喚してからはプッシュして敵のジャングルにコントロールワードを置き、中立クリープを荒らすプレイを繰り返していました。これによってhachamecha選手からのプレッシャーを抑え、少しずつNap選手に対してファーム差をつけることに成功しています。

そしてある程度装備がそろった中盤、ブリンクのないケネンをWスキル「屍の列」で囲い込んで仕掛け、ソロキルにまで持ち込みました。

レーンでの優位を確固たるものにしたapaMEN選手は、このシーン以降Nap選手を押し込み続けて敵ジャングルを徘徊しCS差を伸ばします。ゴールドを稼いで装備を整え、ますます手が付けられなくなっていきました。

さらにNap選手をタワー下に縛り付けることで、集団戦で影響力の高いケネンが動けるタイミングを削ることにも成功しています。CGAはアッシュとケネンのアルティメットによってエンゲージを仕掛けていくような構成でしたが、それを挫いたわけです。

CGAは勝負に出るタイミングを奪われ、真綿で首を締めるようにゆっくりと追い込まれていきます。USGはCGAに構成の強みを活かすタイミングを与えず、自分たちの優位を維持したままGame2に勝利しました。

 

Game3:縦横無尽のTussle&Dasher

Semi Final最後の試合となったGame3は、今シーズンのLJLで見たことのないピックとなりました。Jungleにキンドレッド、Midにタリヤが現れたのです。

実のところこの2体はメタに上がりつつあるチャンピオンであり、USGはそれをさっそく取り入れてきたようです。

キンドレッドは捕まえられてしまうともろいため、慎重な立ち回りを要求されるチャンピオンですが、特に近接攻撃チャンピオンに対する1v1が強く、ルーン「征服者」の変更で頻繁に登場するようになったレク=サイに対してもカウンターとして機能しています。

それがよくわかるのが以下のシーンです。

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偶然リバーで遭遇したふたりですが、すぐさま襲い掛かってくるTussle選手に対してhachamecha選手は逃げの一手です。Luna選手が助けに入り逃げ延びたかに見えましたが、ギリギリで通常攻撃が届きファーストブラッドとなりました。

ただでさえ厳しいマッチアップな上にキルをとられてしまったことで、hachamecha選手はこのあとジャングルのコントロールを失ってしまいます。

そうなると今度は、ローム(レーナーが他のレーンへ仕掛けに行くこと)の得意なタリヤを用いるDasher選手が暴れ始めます。

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序盤有利を握ったことでTussle選手が自由に動き回り、hachamecha選手に対してプレッシャーをかけます。これによってリバーの視界を確保し、USGが先にドラゴンを倒すことに成功しました。

ドラゴンを獲得したアナウンスによって「JunglerはBotサイドにいるんだ」と警戒を緩めたNap選手。その意識の隙をつくようにDasher選手がロームを決めたシーンです。

タリヤはアルティメットの「ウィーバーウォール」によって、指定方向に壁を生成しながらそれに乗って長距離を移動することができるチャンピオンです。つまり敵の背後に壁を出しながら、そこに駆けつけることが可能なのです。

さらにWスキルの「サイズミックシャーブ」は、地面を盛り上げて指定方向に敵をノックバックすることができます。壁に追い込まれたり、壁を抜けようとしてブリンクやフラッシュを使ってしまえば、その先にこのスキルを使われて引き戻されてしまうわけです。

レギュラーシーズンでも高い個人技で活躍してきたDasher選手は、これらのスキルを使ってマップを駆け巡り、当然のように敵を捕まえてキルチャンスを生み出します。

不用意に動いて有利を広げられないように、亀のように手足を引っ込めるCGA。しかしそうすると、Tussle選手がジャングルに入り込んできて「キンドレッドの刻印(キンドレッドのパッシブであり、この数に応じてキンドレッドが強化されていきます)」を獲得してどんどん強くなってしまいます。

序盤に得た有利を中盤につなげ、それを用いて試合を終わらせる。レギュラーシーズンで試合の終わらせ方に困っていたUSGが、それを改善したことを示すかのように綺麗な試合でした。

Game1と同じく28分で試合を終わらせ、Semi FinalはUSGのストレート勝ちで幕を閉じたのです。

 

USGとCGAの大きな違い

レギュラーシーズンの戦績で言えば、CGAが勝つことも十分にあり得る試合でした。しかしそうならなかったのは、ひとえにUSGの「修正力」が上回ったということでしょう。

CGAはMidのLuna選手とADCのArt選手を中心に試合を動かすチームです。このふたりのキャリー力はシーズン中輝き続け、いかにふたりにキャリーさせるかという点は磨かれていたように感じます。

しかしながら序盤の有利を明け渡しがちな点や、ワードの位置が全体的に自陣寄りで相手ジャングルに置けていない点など、私たちの目から見ても明らかな修正すべき部分は最後まであまり変化がありませんでした。

一方のUSGは、目立つところで言えば調子のいいapaMEN選手にキャリー系のチャンピオンを選択させるようになったという変化があります。

さらにKeymaker選手とEnty選手のコンビネーションが修正されたのか、Semi Finalではレーニングでダメージ交換を積極的に行い有利をとりにいく動きが見られました。Botサイドでプレッシャーを生み出すことができるようになれば、相手チームのJungleはそのケアを行う必要が出てくるため、ますますapaMEN選手とDasher選手が暴れやすい環境になります。これまでTopとMidのキャリーふたりの陰に隠れがちなKeymaker選手でしたが、ワンシーズンかけて修正をしてきた成果がここで出たということでしょう。Finalでも期待が持てそうです。

良い点を伸ばし悪い点は修正するということが徹底されていたUSGの戦いぶりからは、レギュラーシーズンで戦いながら、ずっと試行錯誤を行っていたことがわかります。

この差が、Semi Finalでの結果につながったのではないでしょうか。

しかしながらこれはCGAに大きな伸びしろがあるということを示してもいます。LJLに参入してきた前シーズンの最下位から、一気にプレーオフ出場を決めるほどになったというのは、LJL史上類を見ない快挙です。

来シーズンの彼らにはますます期待が持てそうです。

 

LJL 2019 Spring Split、グランドフィナーレでございます

泣いても笑ってもシーズン最後、Finalは4月13日土曜日の17時よりスタートです。

見どころとしては、Midレーンの対決を挙げたいと思います。

USGはDetonatioN FocusMe(以下DFM)に対して、あと一歩で勝てるという試合を繰り広げたこともあります。そのとき惜しくも足りなかったのは、試合を素早く終わらせる一押しでした。時間が長引いてしまったばかりにDFMに逆転の糸口を与え、巻き返されてしまったのです。

その試合でキーマンとなっていたのは、Dasher選手でした。彼のゾーイでの活躍は記憶に新しく、試合後の涙は印象深いものとして刻まれています。

しかし現在のUSGはピックから変化を起こし、確実に強くなっています。序盤の有利を試合展開に活かす術も身に着けたようです。であれば、もしもう一度Dasher選手から試合を作れたなら、同じ轍は踏まないでしょう。

かたやレギュラーシーズンで圧倒的な力を見せつけた”王者”DFM。

かたや苦しい戦いを続け、敗北しながらもここまで這いあがってきた、ふたつとない”非売品”USG。

勝利の栄冠はどちらの上に輝くのか、運命の日はもうすぐそこです。

 

 

 

ライター:霞