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韓国・釜山より……LJLに思いを馳せるDasherからの便り

2019/11/12, 18:00 - BY RIOT GAMES

韓国・釜山より……LJLに思いを馳せるDasherからの便り

いきなり個人的な話で恐縮だが、オフシーズン中にLJL公式サイトで選手インタビューの記事を書くのは初めてだと記憶している。なぜかと言うと、筆者はこちらで韓国人選手へのインタビューをメインに担当しているが、シーズンが終わるやいなや帰国してしまう選手が多いからだ。

ところが今回、友人の結婚式に呼ばれて韓国の釜山へ行くことになっため、LJL Summer Splitを戦った選手のなかで唯一の釜山在住であるUnsold Stuff Gaming(以下USG)所属のMidレーナーDasher選手に会ってきた。

釜山の雑踏のなかから待ち合わせ場所に現れたDasherは、いつものユニフォーム姿とは違い、普通の韓国の好青年といった出で立ちである。彼の案内で繁華街の中心部にあるカフェに入り、LJLについていろいろと語ってもらった。

 

優勝まであと一歩……活躍を見せたSpring Split

韓国2部リーグ時代にお世話になったRahuiコーチに誘われて、USGに加入したDasher。今年1月に開幕したSpring Splitではレギュラーシーズン3位、プレーオフ2位という成績で決して悪くはなかった。しかしDasher本人にとっては、優勝にあと一歩及ばなかったことのほうが心残りだったようである。

Dasher「シーズン中は悪くなかったんですよね。うちのチームはSpring Splitのとき、各個人が強いピックをするよりも、チームとして合わせられる構成をやろうとしていて、僕もライズやアジールなどを使いました。ただし、それほど序盤から強いチャンピオンではないのが難しいところです。ファイナルで対戦したDetonatioN FocusMe(以下DFM)は、終盤に強いファイト指向のチャンピオンを使っても序中盤を無難に進めることができるチームなので、やっぱり僕らは厳しかったですね」

 

悔しかったファイナルのことを、Dasherはこう振り返る。

Dasher「1、2戦目は自分たちのスタイルに合ったバンピックができたものの、DFMを相手にするにはちょっと足りない構成になってしまったような気がします。0-2で3戦目まで追い込まれた僕らは、最後になるかもしれないということで得意なチャンピオンで戦ったんですけど、ちょっと遅かったかなとは思いますね。結局、勢いに乗ることができぬまま負けてしまいました。DFMに合わせた戦略を立てることができなかったのが敗因だったのかもしれません」

 

当時のことを、表情ひとつ変えずに冷静に顧みるDasher。その姿を見て、彼の変化を感じずにはいられなかった。SpringのときのDasherは感情の起伏が激しく、極度の緊張からたびたび体調を崩していた印象がある。

Dasher「当時のことはあまりよく覚えていないんですけど、試合をしている途中に身体の具合が悪くなることが多かった気がします。僕としてはLoLというゲーム自体Midレーンが負けてはいけないと思っているし、日本まで来て下手なプレイを見せるわけにはいかないと考えていました。それなのにうまくいかないこともあり、そういうところから来るプレッシャーのせいでかなり緊張していたのが体調にも影響したんでしょうね」

 

そのきっかけも、DFM戦だったという。試合終了後、悔しさのあまりDasherが涙を見せたシーンを覚えている人も多いかもしれない。

Dasher「SpringのDFM戦のとき、ゾーイで大きなミスをしてしまったことがトラウマになってスランプ気味になったんです。プロとしてチームに加入したからには全試合勝つつもりでいたのに、自分のせいで負けてしまいプレッシャーを感じるようになりました」

 

突然のメンバーチェンジで苦労したSummer Split

ところがSummer SplitではDasherが体調を崩す場面に出くわすこともなく、以前ほど感情の起伏も感じられなくなっていた。何かきっかけはあったのだろうか。

Dasher「日本で生活するうちに日本人の友達もできて、休みの日にリフレッシュできるようになり、メンタル面でも成長したかなと思っています。それからSpringのときは、優勝に手が届くところにいたので1戦1戦の重みがすごかったんです。Summerでももちろん勝ちたかったですが、やっぱり選手交代などもあってちょっと難しかったですね」

 

ご存知の方も多いと思うが、シーズン開幕直前にTopレーナーのapaMENが個人の事情により当分の間試合に出られなくなり、急きょ新人のArumikが出場することになったのである。

Dasher「SpringではapaMENさんがサイドレーンに出られるという強みがあったので僕がアジール、ライズ、ゾーイのような成長型のチャンピオンを使ってもゲームを引き伸ばせたんですが、Summerの前半はArumikが新人ということもあってなかなか思い通りにはいきませんでしたね。こればっかりは、仕方がなかったと思っています」

 

とは言え最下位スタートだったにもかかわらず、最終的に5位までのぼりつめた。しかも4位のBurning Core(以下BC)には直接対決で負けただけで、勝利数は11勝で同率。さらにWeek8には、当時11連勝中だったDFMにも勝利している。シーズン後半になって、勝てるようになった理由を尋ねてみた。

Dasher「やっぱり徐々にArumikがチームゲームに慣れてきたことと、僕がフィズやイレリア、ブラッドミアなどをやるようになって、ようやく自分たちのチームカラーを見つけることができたからかな、と。Arumikもシーズン後半はレーン戦で勝てていましたし、ソロキルなど良いパフォーマンスを見せていましたね」

 

apaMENの不在がゲーム面で大きな影響を及ぼしたのはリーグ前半の成績を見ても明らかだが、メンタル面でも影響があったと言う。

Dasher「apaMENさんはベールに包まれたシックな先輩ですけど(笑)、親しくなったら面白くて良い人なんです。すごく大人なのに若い選手にも合わせることができて、大会やスクリムで負けてもapaMENさんがちょっとおどけて面白いことを言って雰囲気を明るくしたり、みんなの為になることを言ってくれたりしました。もしかしたらそれほど深く考えずにやっていたのかもしれませんが、僕としてはとても頼りになると感じていたんです。それが急にSummerでなくなってしまったので、序盤は少し辛かったですね」

 

LJLでDasherをイラつかせた(?)選手たち

ここまで今年のLJLを時系列にざっと振り返ってもらったが、ここからは少し視点を変えてLJL全体に目を向けてみよう。今年初めて日本にやってきたDasherの目には、LJLがどのように映ったのだろうか。まずは、日本人選手のなかで一目置いている選手について聞いてみた。

Dasher「僕より経歴の長い選手についてあれこれ言うのはおこがましいので、新人選手のなかから選ぶとすればBC所属のRayFarky選手とYuhi選手ですね。RayFarky選手はゲーム内でイライラさせられるプレイが多くて気に入りました(笑)。相手をイラつかせるプレイができるっていうのは上手い証拠なんですよ。突然ブラッドミアのようなチャンピオンで戦闘に混じってきたり、エイトロックスのアルティメットで集団戦で圧勝したり、相手のやりたいことをさせないプレイができていると思います」

 

面白い切り口の回答ではあるが、間違いなくベタ褒めである。一方、Yuhiに対しては、ちょっと違う感情のようだ。

Dasher「Yuhi選手とは、ひょんなことから日本サーバーでデュオをやるようになって。大会を見ても彼の経歴を考えたらとても伸びしろのある選手だと思いますし、ゲームに対する理解度も高いと個人的には見ています。あとは単純に性格が良くて可愛いから好きなんですよ。向こうはどう思ってるかわかりませんけどね(笑)」

 

そして、野暮であるとは思いつつライバルを聞いたところ、ちょっと考える素振りを見せたDasherだったが、予想通りCrest Gaming Act(以下CGA)のLunaを挙げた。同じ時期に韓国から日本へやってきて、年間通してMidレーナーとしてプレイしたのはこのふたりだけなのだ。

Dasher「彼は色々なことを早く吸収しているし、フィジカルが人一倍素晴らしいです。今はまだミスがちょくちょくあるせいかめちゃくちゃ上手いっていう印象はないかもしれないんですけど、年齢や経験を考えたら将来性がすごくあると思います。何より、Midで対戦していて一番僕をイラつかせたのがLuna選手でした(笑)」

 

ここでひとつ、ちょっと変わった質問を投げかけてみた。これまでLJLでは韓国人選手をJunglerとSupportに置くのが主流だったが、最近はMidレーナーやADCに起用するチームが増えている。DasherもMidレーナーだ。なぜこのような傾向が強くなってきているのか、Dasherの考えを聞いてみたくなった。

Dasher「僕の考えでは、LoLというゲームはいくらJunglerやSupportが序盤で上手くやっても終盤に集団戦を行わなければならないし、そこでダメージを出さないといけないからだと思います。日本のリーグ自体が後半に重きを置くプレイスタイルだし、タワーダイブなどのリスクのあるプレイはあまりやらないほうなので、JunglerやSupportが持つ利点よりもMidやADCに韓国人選手を置いて、中盤から終盤にかけてプレッシャーをかけていくほうが良いと思うんです」

 

とは言え、LJLでは実際に1位のDFMと2位のV3がJunglerとSupportに韓国人選手を置いている。

Dasher「日本ではJunglerとSupportの人材が少ないので、そこに韓国人選手を置くことが効率の良いやり方だと理解しています。ただ、Steal選手もBaby選手も日本のチームで韓国人のMidやADCといっしょにプレイしたことがないじゃないですか。それをまだ見たことがない状況だし、僕は個人的にLoLというゲームは結局ダメージを出せるほうが勝つという考えを持っています。ただしこれはあくまでも僕の主観的な考え方であって、何が正しくて何が間違っているとは一概に言えないことだと思います」

 

「選手として、そして人間として成長していきたい」

そろそろまとめに入ろうということで、今年のLJLで一番印象に残っている試合を尋ねたところ、Summer SpritのWeek6のSengoku Gaming戦を挙げた。Dasherがフィズをピックした試合である。

Dasher「韓国人MidレーナーのLuna選手やHollis選手はヤスオ、ルブラン、アカリなどアサシンを使っていて上手かったですよね。それに比べて僕はメイジチャンピオンであるアジール、ライズ、ゾーイの3つをよく使っていました。だけど僕もアサシンを使ったアグレッシブなプレイを見せたいと思っていたんです。それが一番上手くできたのがフィズでした」

 

しかもこのときフィズはほとんど練習しておらず、相手がタリヤをピックしたのを見て即興的に選んだのだとか。こういう裏話を聞いてから見返すと、また違った視点で試合を楽しむことができるかもしれない。そして今後どんな選手になりたいか、という問いかけにはこう答えた。

Dasher「僕もまだまだ若いほうなので成熟していない面も多く、大会でも感情のコントロールが上手くできないこともあるんです。これからも選手として、そして人間として成長していきたいと思っているので、そういうところを見守ってもらえたら嬉しいです」

 

成長していくところを見る、という意味では我々がすでに確実に目撃したものがある。日本語能力だ。来日当初はまったく話せなかったが、最近は放送のインタビューにも日本語で果敢にチャレンジしている。日本語の上達を褒めると、Dasherは嬉しそうに笑った。

Dasher「出国の1週間前に書店へ行って日本語の会話や文法の本と単語帳を買い、事前に少しだけ目を通しました。ゲームの練習をたくさんすることも重要だと思いますが、LoLはみんなで話し合いながら進めていくゲームなので、言葉も大切だと思うんです。日本語を使えば、ほかの日本人選手たちにも僕の努力をわかってもらえるだろうという考えもありました。自分としても勉強するのが好きなので、今も楽しく学んでいます」

 

筆者とのインタビューでは言いたいことを100パーセント表現してもらうためにすべて韓国語で実施したが、日本語を学ぶ姿勢からも日本に対して非常に良い印象を持ってくれているのが感じられる。冒頭でも触れたように今回はDasherの故郷である韓国・釜山でインタビューを実施したが、再び日本の地で彼に会うことができるよう期待しつつ帰路についた。

 

 

 

ライター:スイニャン