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Gigabyte Marinesとレーンスワップ

2017/05/19, 18:00 - BY RIOT GAMES

MSI

Gigabyte Marinesとレーンスワップ

GAMとレーンスワップ

MSIでGigabyte Marines(以下GAM)が旋風を巻き起こした。彼らの特異なスタイル、少数戦に特化した血みどろな戦い方は多くのファンを生み出したが、彼らの面白さはそれだけではない。今現在、序盤のマッチアップのメタはスタンダードレーンで固定されている。そんな中で彼らはレーンスワップを行ったのだ!

レーンスワップとは

すでに一度記事になっているが、あらためてレーンスワップの特徴を説明していこう。

最も基本的なことは、通常であればボットレーンにいくはずのADCとサポートが最初からトップレーンに行くという点だ。その他の事象についてはその時々のメタやパッチに左右される。例えばトップレーナーとジャングラーが一緒にジャグリングをする場合もあれば、トップレーナーが最初からボットレーンに位置取りジャングラーは通常通り1人でジャングルをまわる場合もある。

このレーンスワップによって期待されることは、ADCが確実にCSを確保できることだ。トップレーンにおいて2対1の状況を作ることで、通常の2対2のレーニングと違いかなり楽にCSに集中することができる。またレーンのコントロールを確実に握れることにより、タワーへのアプローチが自由自在になることも見逃せない。メタによってはそのままタワーを破壊しにかかることもあれば、一方でミニオンをコントロールしてタワーに全くアプローチしないという場合もある。前者の動きは試合展開が早いメタで採用されることが多く、後者は試合展開の遅い(ミッドレーンのメタがジグスだったり、ADCがジンクスやコグ=マウだった場合など)メタで採用されることが多い。

トップレーナーの動き方は上述したとおりメタやパッチに大きく左右される。タワーダイブ能力が高いチャンピオンが揃っていたり、タワーのダメージが低いときは、トップレーナーは味方ジャングラーと一緒に動きレーンに顔を出すことはあまりない。一方で全く逆のメタであったり、もしくはジャングラーとトップレーナーが共にウェーブクリア能力が高い場合はトップレーナーはボットレーンに位置取ることが多い。ADCと違い得られるゴールドや経験値が大きく制限されているため、最も安全で効率の良い動き方がその時々で選択されている。

なぜレーンスワップがメタではなくなったのか

昨年の2016 WCSから、正確に言えばパッチ6.15からレーンスワップが行われなくなった。それまではほぼ毎試合おこなわれており、スワップをしないほうが強いチームがわざとトップレーンにADCとサポートを送り込んでトップで2対2を作り出すというようなスワップを逆手に取った動きも発生していた。しかしパッチ6.15のタワー関連の変更によってスワップは行われなくなってしまった。

パッチ6.15によってボットタワーがトップやミッドのタワーと比べて大幅に柔らかくなった。試合開始から5分間、タワーには防衛拡張というダメージを軽減するバフが適用されているのだが、ボットレーンだけ防衛拡張のバフが適用されなくなったのだ。それによりトップレーンとボットレーンの間でタワー破壊の時間差が生まれることになった。しかしこのアプローチは以前にもスワップ対策として行われていた。パッチ4.1では同じようなアプローチとしてトップとミッドのタワーだけチャンピオンのAAを20ダメージ下げるバフが適用されたが、競技シーンにおいてスワップが行われなくなるというようなことはなかった。影響が大きかったのはもう一つの、タワーを最初に破壊したチームにファーストブラッドボーナスが適用されるという変更だ。

スワップをしかけた側は必然的にトップタワーを攻撃することになり、相手はボットタワーを攻撃することになる。となるとタワーの柔らかさに大きな差があるため、相手の方が先にタワーを破壊し、タワーのファーストブラッドボーナスを手に入れる。スワップをしかけた側は試合のテンポを失うだけでなく、ゴールドの有利を相手に明け渡してしまうことになる。パッチ6.15を境にレーンスワップ戦術が廃れたのはそのためだ。

2017のレーンスワップ

今現在でもレーンスワップは廃れたままだ。ボットタワーだけ柔らかいし、タワーのファーストブラッドも存在したままだ。にも関わらずGAMはMSIにおいてレーンスワップを実行した。それとEULCSのSpring SemifinalでもFnaticが実践していたので、あわせて分析していきたい。

まずは狙いがわかりやすいFnatic(以下FNC)のレーンスワップからみていきたい。EU LCS 2017 Spring SemifinalのG2 Esportsとの2試合目で行われた。

特徴的なのは今シーズン初めてピックされたアニーサポートだ。固有スキルの「火遊びだいすき」を活かした範囲スタンによって試合を動かしていくことが求められている。しかしレーニングが得意というわけでもなく、さらにはスタックが可視化されているためにしかけたいタイミングが相手に伝わってしまうために、スレッシュやアリスターと比べるとかなりニッチなピックとなっている。ただフラッシュとRの「やっちゃえ!ティバーズ!」の長距離の範囲スタンコンボは強力だ。

FNCはレーンスワップを実践したが、やはりさきにタワーを破壊されてしまう。しかしこれはFNCも織り込み済みであり、狙いはほかのところにあった。

通常の試合展開では5分の段階でジャングラーとサポートが2人がかりでミッドレーンにガンクするというのはかなり珍しい。しかしレーンスワップしたことにより、互いのサポートのリコール回数が増え、マップを縦横無尽に動くことが可能になっている。普段であればサポートがさきにリコールしてしまうとADCが1人取り残され1対2の状況になり、CSを落としたり倒されてしまう危険性が増す。しかしレーンスワップの状況ではミッドレーン以外のマッチアップが流動的になり、相手の動きを探るためにサポートとジャングラーの視界のコントロールが鍵になる。そのためリコールやレーンから離れる動きが活発になる。

さきほどのミッドレーンへのガンクによりオレリオン・ソルが自由にロームできるようになった。それを活かしてジャングラーのエリスと共にボットレーンへとしかけ、タワーの確保を狙った動きだ。

改めてFNCの構成を確認すると、ロームや少数戦が得意なチャンピオンが多いことに気がつくだろう。オレリオン・ソルはこういったロームが可能な環境だと無類の強さを発揮するし、アニーやエリスがそういった環境を作り出している。さらにADCのトゥイッチはマークスマンでは珍しいガンクの得意なチャンピオンだ。FNCのレーンスワップは、マップをオープンな状況にし、少数戦の圧力をいたるところで作り出すことが狙いだ。

GAMのレーンスワップ

ではGAMが行ったレーンスワップの狙いはなんだろうか。MSI Day2のGAMとFlash Wolves(以下FW)の試合を確認していこう。

構成は特に変わったところはない。どのチャンピオンもMSIのメタに沿っているし、FNCと違ってサポートはディフェンシブなサポートであるルルを選択している。ただしGAMというチームが少数戦を得意とし、キルが多発する血みどろな戦いを好むという点は抑えておいたほうが良いだろう。

トップレーンでファーストブラッドを生み出したことはFNCと共通しているが、トップレーナーとジャングラーの動きはかなり違うことに注目したい。FNCは予めトップレーナーがレーンに出ている状態からスタートしたが、GAMはラプターを狩ってからボット側のジャングルコントロールに参加している。これによりエリスは赤バフを狩ることができ、またトップレーナーと共にボットレーンのカバーに入ることが可能となった。またそのラプターにしても、ラストヒットを全てミッドレーナーに渡すことでミッドレーンのLv2先行を可能にし、それをボット側のジャングルコントロールにつなげていることも見逃せない。

トップレーンを押し込みミニオンにテレポートをすることでファーストブラッドを生み出しているが、その間ずっとエリスがボットレーンのカバーを1人でおこなっていた。それによりグレイヴスに対してミニオンの経験値分の有利を作り出すことになった。またFNCと違いボットタワーを守ることもできている。総合すると、ファーストブラッド分のゴールドアドバンテージとジャングラーの経験値アドバンテージを生み出すことができたと言えるだろう。

その後、ミッドレーンに圧力をかけルブランがロームしやすい環境を作り出している。これもFNCと同じだが、作り方がサポートとジャングラーのガンクではなく、トップレーナーによるガンクとジャングラーの経験値アドバンテージを活かしたカウンタージャングルであることに注目したい。後者の動きはレーンスワップによって生み出された有利が可能にした動きであり、彼らの狙いはこのジャングラーの経験値アドバンテージにあったのだと思われる。

試合の結果はFWの勝利というものになったが、しかし20分の時点で約6000ゴールドほどGAMが勝っており、ジャングラーの差は経験値が1900、ゴールドが2100まで拡がっていた。20分以降のマクロの動きに課題がなければ、十中八九GAMが勝っていただろう。

同日行われたGAM vs G2の試合でもレーンスワップを実行していたが、この試合ではバードを中心としたマップ移動能力と少数戦を作り出すことを主軸においていた。ジャングラーのアドバンテージを作ることも狙っていたのだろうが(2分50秒の段階で同じようにボットレーンのカバーに入っている)、G2がしっかりと対策をしてアドバンテージを作られないようにしていたので難しかったようだ。

終わりに

今シーズンはGAMとFNCしかレーンスワップを実践していないし、基本的にメリットよりもデメリットのほうが大きい戦術であることは間違いない。序盤のアドバンテージを重要視する韓国のチームが実践していないことからもデメリットの大きさが伺える。しかしここまで確認してきたように、少数戦に特化した戦術であればデメリットを上回るメリットを手に入れることが可能のようにみえる。GAM対策としては序盤から試合のペースを落とし中盤以降のGAMのミスを突いていくというものになるだろうが、レーンスワップで強引にペースを上げられてしまうと難しくなる。MSIに出場している各チームもしっかりとレーンスワップに対応していたが、GAMの得意な展開にまきこまれてしまっていた。

多くのチームにとってはいまだデメリットの大きい戦術だが、GAMのようなチームにとっては大きな武器になっていた。今後はGAMの(FNCの?)フォロワーが出てくるのか、それともレーンスワップに新たな戦術を組み合わせてくるチームが出てくるのか、Summer Splitが待ちきれない。